子供の幸せを願って

~未熟児で産まれ、知的障害・言語発達遅延を患った息子の成長において私ができること~

面接官は入室時の面接前にその人を判断している?!~言葉のいらないコミュニケーション~

昨日の防災訓練を通じて、昔の息子のことを思い出しました。 

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小さい頃、車が大好きで特に救急車や消防車やパトカーが大のお気に入りだった息子くん。

 

息子はそんな働く車がいつも近くを通るたびに顔を真っ赤にして叫び声を上げながら大興奮していました。

 

未熟児で産まれ、知的障害と言語発達遅滞を患った息子は、まだまだ何もしゃべることができない。言葉が遅れているというよりも、まともな言葉が全くない状態でした。

 

そんな息子なりの『消防車』という言葉は、『ぶっぶっぱー』でした。

 

しかもはっきり「ぶっぶっぱー」というのではなく、きちんと発音できない息子の言葉は濁ったようなこもったような音。

 

もう、何の脈略もないその言葉は誰にも理解することができないと思います。

 

それでも、私にはその「ぶっぶっぱー」が息子にとって「消防車」だということが分かりました。

 

もちろん、最初は分からない・・・

 

でも、何度も何度も消防車を見かけるたびに、私が「消防車だね!」と語りかけるたびに、「ぶっぶっぱー」と確かに言っている。

 

毎日毎日、息子と長い時間を過ごすことによって少しづつ私は息子の言葉を分析し理解していきました。

 

普段、仕事で息子と接する時間が少ない旦那さんは理解することができない難語です。

 

それを、私が理解できた言葉を旦那さんや近しい人たちに伝える。

 

息子にとっての「ぶっぶっぱー」は「消防車」のことだよ!と。

 

でも、ここで問題なのが同じ「ぶっぶっぱー」にもいろいろな種類があったということ。

 

入園前、幼稚園に伝えるために私が記録をしたノートには・・・

 

❝消防車、ヘリコプター、清掃車→ぶっぶっぱー❞

 

そう、息子の「ぶっぶっぱー」にはたくさんの意味が込められていました。

 

そのため、さらにその難語からだけでなく、その時その時の状況を絡み合わせて理解していく必要があったのです。

 

新幹線は「たんたんて」、救急車は「てぃってぃっちゃ」、パトカーは「うっうー」、赤は「だあだあ」、黒と白は「りぃぽ」、靴は「ぶぶ」、りんごは「いんぼ」、いもは「んも」、どうぞは「ぼーぼ」、だめは「まね」、小さいは「ちぇっ」・・・・(詳しくはあらすじを通して書かせていただきます。)

 

これでも分からないのに、さらに濁ったこもった音で余計に分からない・・・

 

私は息子なりの言葉を理解するのに必死でした。

 

「言い直しをさせるのではなく正しい発音を「〇〇だね~」と聞かせ続けてください。」と言語聴覚士さんからアドバイスをもらっていた私は、常に見るもの感じるもの全てのことを簡単な言葉で実況中継していました。

 

息子なりに使い分けをしているのであれば、もしかしたらそのうちふとしゃべることもできるかもしれない・・・

 

ネットでは❝言葉の爆発❞と題して、「〇歳になったら、急に言葉が増えました。」とか、「〇歳になったら、今までしゃべれなかったのに急に文章で話すようになりました。」と書いてある・・・

 

もしかしたら、息子もそんなことがあるのかもしれない・・・

 

でも、そんな淡い期待は、数カ月経っても、半年経っても、一年経っても、数年経っても・・・叶えられることはありませんでした。

 

3歳になっても、4歳になっても、5歳になっても、しゃべることができない息子。

 

私は途方に暮れていました。

 

でも、そんな状況の中でも私は息子の気持ちを理解することができた。

 

それは、それらの難語や行動、さまざまな表情やジェスチャー、ちょっとしたアイコンタクトなどを通して、息子の気持ちが伝わってくるのです。

 

楽しい時は笑い、嫌な時は泣いている。

 

何か物を取ってほしい時は、指をさして「あっあっ」と言っている。

 

何か食べたいときは、食料のあるところに行く。

 

困った時は目で訴えてくる。

 

そのひとつひとつのレーダーをしっかり受け止めていくことによって、コミュニケーションをとることができました。

 

発語ばかりに固執していた私はそうして数年を過ごすうちに、「コミュニケーションに言葉はいらない。」ということを強く感じていったのです。

 

何かしゃべってほしい・・・会話がしたい・・・

 

そう思っていた私は、もうこのまま話すことができなくてもいいかな・・・とさえ思うようになっていました。

 

もしかしたらコミュニケーションとは、人の表情や雰囲気、ジェスチャーや行動などが土台になっているのかもしれない。

 

言葉はそのおまけなのかな?とさえ感じてしまう程でした。

 

 

 

たまに巷で耳にする「面接官は入室時の面接前に合否を決めている。」という情報。

 

私はそれまで「そんなことはない。何も話さずにその人のことを理解することなんて不可能だ。」と思っていました。

 

でも、息子との言葉のないコミュニケーションを経た今、「あながちそれも間違いではないのかもしれない・・・」と思うようになりました。

 

その人が醸し出す表情や行動、雰囲気から、その人を感じる。

 

 

 

言葉のない世界・・・

 

 

 

もちろん、言葉で説明しなければ伝わらないことがたくさんあることも事実です。

 

でも、言葉のない世界でコミュニケーションをとることができるのも事実です。

 

だからこそ、そのふたつを組み合わせることによって最強のコミュニケーションとなる。

 

私はそう思って、いつもそのことを大事に意識しています。

 

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