あるホームレスの方との出会い~「真の優しさ」とは何かを考える~
もう10年以上前の話です。
まだ、お姉ちゃんが体の不調を抱えながらも、電車に乗ってお出かけができていたあの頃・・・
そんなお姉ちゃんと私が、とある川岸を散歩していました。
普段は行かない奥の方まで足を運んでみると、そこにはブルーシートでできた大きなお家が。
そう、ホームレスの方のお家でした。
「おう!」
陽気に声をかけてくださったその方に、私たちも「こんにちは(^^)」と挨拶をしました。
すると、そのブルーシートでできたお家を案内してくださって。
「ここが寝室で、こっちがリビング」
「この水槽にはそこの川で捕まえたドジョウがいるんだよ!ペットだよ(^^)」
「これが俺の船(^^)」
立って移動ができるほどに天井も高く、奥行きもとても広くて、本当に寝室とリビングに分かれていました。
「すごいですね~!」と驚く私たちの反応もうれしかったのか、とても明るく陽気に接してくださいました。
少しの間、立ち話をしていると「これ飲む?」と新しい缶のお酒を勧めてくださったホームレスの方。
そのご厚意は丁重にお断りさせていただいたのですが、私たちに勧めてくれたその2本の缶はその方にとってとても大切なお酒のはず・・・
そんな2本のお酒に私は「真の優しさ」を感じました。
とても裕福とはいえないその生活の中で、自分の貴重な食料を分け与える・・・
その方が何よりも必要としているのは「心のつながり」だったのかもしれません。
様々な経緯があって、ホームレスという道を歩むことになった方たちは、果たして全てが自己責任なのか?
私はどうしてもそう思うことができません。
病気で職を失ったのかもしれない、思うように人間関係を構築できずに頼れる人がいないのかもしれない、精神を壊して社会には復帰できないのかもしれない・・・
そもそも、現代では発達障害というものが世間で浸透しているものの、現在のホームレスをされていらっしゃる方たちの時代はまだそういった障害は認知されていませんでした。
だから、もしかしたらそういった先天的な要素が原因の場合もあるかもしれません。
周りに理解されないまま苦しんでいたのかも・・・
この競争社会で生き抜いていくためには、私はかなりの能力が必要だと思っています。
それは発達凸凹の息子を育てていて強く感じることです。
自分の力で生きていくためには、最低限のレベルが高いです。
知識も学力もコミュニケーション力も体力も精神力も・・・
普通に生きていくって、そんな簡単なことではないんですよね。
そのため、どこかでうまくいかなくなって、その「普通の生活」ができなくなることって当たり前に発生することでもあると思います。
だから、そんな苦労を経験されながらも、私たちに差し出してくださったあの2本のお酒に、私は心を揺さぶられたんです。
とてつもない優しさを感じ、心のつながりの大切さを教えてもらいました。
なぜ、こんな10年以上前のことを思い出したのか・・・
それは、今回の台風災害での『ホームレスの避難所問題』・・・
賛否両論飛び交っていましたね。
そんな中で「何をされるか分からない」といった意見が・・・
でも、私が知っている限りでは、ホームレスの方はいつも被害者となる事件ばかりです。
なんだか、そんな世の中に「弱いものいじめ」の風潮を感じずにはいられません。
子供たちには「弱いものをいじめてはいけない」「困っている人を助けてあげよう」「命を大切にしましょう」と教えているにも関わらずに、もう社会の風潮が『弱者は排除する』というような感じになってしまっているのかな?とさえ感じました。
一方では大切な2本のお酒を分けてくれようとしたホームレスの方がいて、もう一方ではあの最強台風でも避難所の受け入れを拒む方たちがいる現実・・・
「真の優しさ」とは何かを考えさせられました。
では、私は直接的な支援ができるのか?と言えば、それはできないんですよね・・・
自分の中にも大きな矛盾があります。
ただ、真冬に公園で寝ている方に暖かい飲み物をそっと渡すことはできるかもしれない・・・
そんなちょっとの思いやりが、また「頑張ろう!」という活力に変わっていくのかも・・・
一人ではなく二人ではなく、全ての人たちがそんなちょっとの思いやりを相手に伝えることができたら・・・
これはホームレスの方たちに対する思いやりだけではなく、日常生活全てにおいて通じる話です。
家庭でも、学校でも、職場でも、どこでも・・・
過去記事にも書かせていただきましたが、人の心を動かす時に必要なのは「厳しさ」ではなく「優しさ」です。↓
だから、世の中をもっと「優しさ」で包むことができたら、みんなが生きる活力を見出して、ホームレスの人口も減ってくるかもしれません。
何かを頑張る力、何かに意欲を持つ心、そして未来に希望を持って行動していくには、「真の優しさ」と「心と心のつながり」がとても大切になってくると思います。
子供たちにもそんな二つのことを大切にできるような人間になってもらえるよう、今の私には何ができるのかを考えながら生活をしていきたいと思っています。