「欲望」と「向上心」の密接なつながり~『夢』を『目標』に変えるためにできること~
息子に対する私の夢は、大きな変化の道をたどってきました。
障害の有無に関わらずに、子供を持つ親なら気にするであろう将来のこと。
特に発達に問題があると、この子供の将来に関しては強く気にしてしまう部分です。
未熟児で産まれて、軽度知的障害と言語発達遅滞を患い、5歳までまともに話すことができなかった息子に対して、まず不安になったことは「この子はどうやって生きていくのかな?」ということ。
幼少期、コミュニケーションはとれるけれど、落ち着きもなく、宇宙語ばかりだった宇宙人。↓
会話ができることを想像することさえもできずに、途方に暮れていたあの頃・・・
当時の私の夢は『息子は障害者を受け入れてくれるパン屋さんで働けたらいいな』というものでした。
小学校も中学校も支援級に通って、就職先はパン屋さん!というイメージだった私。
あとは、私がしっかりと貯金をして、細々と暮らすことができればいい・・・
ただ、息子が食事を拒絶するようになった時期には、そんな些細な夢さえも忘れてしまうほどに追いやられ、ただただ「食べられるようになってくれたらいい・・・もうこのまましゃべることができなくても・・・」と思うほどでした。↓
でも、再び食事を摂れるようになった息子に対して感じたことは「早くしゃべってほしい・・・」という強い欲望。
「もう、しゃべらなくてもいい・・・」と心から思うことができたのに、一つ「食べれるようになってほしい」という欲望を満たした先には、更なる欲望が待っていました。
そして、会話ができるようになってきたら、次は「通常級に行けるかな?」という欲望が・・・↓
そして、またその欲望を満たし、順調にその生活を送っていた先には・・・
「通常級のまま進学してほしい」という欲望が。
小学校入学時はいつ支援級に異動してもいいと思っていたのに・・・
そうしているうちに、大学が視野に入ってきて・・・
どんどんどんどん、沸き起こってくる欲望。
そう、今の私の夢は・・・
『息子が大学に行きたいと言った時に、行かせてあげたい・・・』というもの。
ここで重要なのは、大学に行かせたいのではなく、本人が希望したらその時大学進学も選べるような状況を作ってあげたいということです。
生きる道は他にもたくさんあるけれど、将来、少ない選択肢から選ぶよりも、その選択肢の幅を広げて、大きく成長した息子がしっかりと自分の意思で道を決められるようにしてあげたい・・・
これは、それだけ息子が成長を遂げてくれているということです。
だって、その成長がなければ昔の欲望のまま・・・
その欲望が一つ二つと満たされていくことによって沸き起こった今の欲望・・・
これら以外にも、一つできるようになれば、「次はこれ!次はこれ!」と細かなことまでたくさんの欲望が溢れてきました。
まさに、人間の欲深さといったところでしょうか。
『ご飯を食べられるようになってほしい』という欲望から、『離乳食に戻して、頑張って食べさせよう!』という向上心につながり・・・
『しゃべれるようになってほしい』という欲望から、『寝ている時以外は常に話しかけて、発音訓練を頑張って、絵本をたくさん読んであげよう』という向上心につながり・・・
『通常級で頑張ってほしい』という欲望から、『通常級で本人が困らないように、しっかりと事前準備とサポートをしよう』という向上心につながり・・・
『テストで平均点はとってほしい』という欲望から、『引き続き一緒に勉強を頑張ろう』という向上心につながり・・・
『通常級のまま、中学へ進学してほしい』という欲望から、『頑張る一色になることなく、心のバランスをしっかりと考えて生活していこう』という向上心につながり・・・
こうして、幼少期、夢を見ることさえできなかった【大学】を夢にすることができました。
「障害者としてパン屋さんで働けたらいいな・・・」という夢から、「大学を選択肢の一つにできたらいいな・・・」という夢への大きな変化。
ただ、ここで気をつけなければいけないことは、あくまでもこれは『夢』であり『目標』までにはできていないということ。
この今の『夢』を『目標』に変えることが、今の『目標』です。
大学を視野の一つに入れるためには、今まで同様の「欲望」と「向上心」が必要になってきます。
今までは私の「欲望」で良かったのかもしれないけれど、今後はもう小学校後半戦を迎える息子の「欲望」がとても重要になってきます。
「何もせずに、毎日をダラダラ過ごしていたい!」
「ずっと、遊んで暮らしたい!」
これも立派な欲望です。
そうなってしまわないように・・・
まずは、親子の信頼関係を大切にし、環境を整え、たくさんの前を向いた「欲望」を持つことが大切。
その「欲望」が「向上心」へとつながり、『夢』や『目標』を変化させ、自らの道を切り開いていくのです。